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概要

未来へ伝えたい阿武の昔ばなし

住吉様のむくの木野の地じ(野の柳やなぎ)に大きなむくの木があるのを知っていますか?おじいさんのおじいさんたちが「もう千年もたった木じゃ」と言っていました。今はもう親木は枯かれてしまって、親木から出た枝えだがこんもりと茂しげっています。野の地じ(野の柳やなぎ)の人たちは昔からこの木をとても大切にしてきました。むくの木は淡あわい緑色の小さな花をつけたあと、緑色の実をつけます。熟じゅすくと黒くろ紫むらさき色いろになり、甘あまい味がします。むくの木が実をつける時期になると、子どもたちは木に登って実を取ったり、木こ陰かげで落ちている実を拾ったりするのでした。ある秋のことでした。ゲンちゃんを先頭にして、五、六人の子どもたちが木に登って枝えだをゆらしたり、実を落としたりして遊んでいました。そうしているうち、そろりそろりと向こうの枝えだに移うつろうとしていたゲンちゃんが、「わあっ」という悲ひ鳴めいとともにどうっと下に落ちてしまいました。いっしょにいた子どもたちはびっくりして急いで自分たちも下におりました。「ゲンちゃん、だいじょうぶか」「痛いたかろう」「けがはしちょらんか」みんなが心配していろいろ聞きます。ゲンちゃんはしばらく腰こしのあたりをさすっていましたが、やがて立ち上がると、「どうもないよ」と言ってすたすたと歩き出しました。みんなはその様子を見てほっとしました。住すみ吉よし様さまのむくの木き住すみ吉よ様しがお守りくださる20