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概要

未来へ伝えたい阿武の昔ばなし

青い目の人形福ふく賀が小学校に「パシーちゃん」がやって来たのは、今から八十年以い上じょ前うの、昭和の初はじめのことでした。パシーちゃんはアメリカ生まれの青い目のお人形です。「きれいなお洋服を着ちょるのぉ」「見てみぃ、お目目が青色じゃあや」大だいかんげい歓迎を受けたパシーちゃんは、すぐに福ふく賀が小学校の人気者になりました。この頃ころ、日本各かく地ちの小学校や幼よう稚ち園えんにアメリカから一万三千体近くのお人形が贈おくられています。それは、日本で宣せん教きょう師しをしていたギューリック氏しが、アメリカに帰国する前に、悪化していく日にちべい米関かんけい係に心を痛いため、「アメリカの子どもたちの心を込こめた人形を、日本の子どもたちに贈おくろう」と、人々に呼よび掛かけて実じつげん現させたプレゼントでした。つまりパシーちゃんたちは、平和への願ねがいを込こめた使者として日本にやって来たのです。ところが、やがて日本とアメリカの戦せんそう争が始まると「憎にくきアメリカから来た人形なんて捨すててしまえ!」という声が日本国内で高まり、多くの人形たちは捨すてられたり、焼やかれたりしてしまいました。でも、「人形を捨すてるのはかわいそうじゃ」「戦せんそう争が終わるまで隠かくしちょこう」と思った人たちがいて、福ふく賀が小学校のパシーちゃんは苦しい戦せんそう争の時代をくぐりぬけることができました。戦せんそう争が終わった後も、パシーちゃんは福ふく賀が小学校で過すごしました。「おはよう、パシーちゃん」「さようなら、また明日」晴れの日も雨の日も、玄げんかん関から見守ってく昭和初しょ期きからのアメリカとの絆きずな青あおい目めの人にん形ぎょう74